活性酸素(Reactive Oxygen Species,ROS)は,酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称であり,狭義にはヒドロキシルラジカル(•OH),スーパーオキシドアニオンラジカル(O2-•),過酸化水素(H2O2),一重項酸素(1O2)の4種を指し,広義には一酸化窒素 (NO),ペルオキシナイトライト(ONOO−)などの活性分子種も含む。ここでは狭義の活性酸素種(ROS)に限定して述べる。ROSは,酸素分子(三重項酸素,O2)が順に一電子還元されることによってO2−•→•OH→H2O2の順に生成する。1O2は,O2が有する一つの不対電子のスピンの方向が逆転しπ*2pxに2つの電子が入った状態であり,電子を失ったπ*2py軌道が電子を強く求めるため強力な酸化力を発揮する。生成系としては,光感受性物質が特定波長の光照射により励起され,励起状態の光感受性物質から基底状態のO2へエネルギーが遷移することで1O2が生成されることが知られている。本総説では,ROS生成系の殺菌技術への応用を中心にROSによる微生物制御研究の最近の研究動向を紹介する。