医療現場で使用される世界で2番目に開発された低温滅菌は,低温蒸気ホルムアルデヒド(LTSF)滅菌で,1966年英国ブリストル大学のAlder, V. G.らにより酸化エチレンガス(EOG)滅菌の代替として開発された滅菌方法である。開発当初の37%ホルムアルデヒド溶液をチャンバー内で希釈使用する機種を第一世代,温度低下を実現した機種を第二世代とすると,現代の2%の実用液によるダイレクト・インジェクション・システムは,「第三世代のLTSF滅菌装置」と位置付けることができる。
日本での低温滅菌の普及は,結果としてSUDの再生を促進してしまった可能性が高い。高圧蒸気滅菌は滅菌における第一選択肢である。低温滅菌は高圧蒸気滅菌が行えない際に選択する「最後の選択肢」であるので,容易に低温滅菌物を増やすべきでない。SUDの再生を行わない,被滅菌物に応じた適正な滅菌方法を選択するという「滅菌の基本に返る」ことにより,国内の低温滅菌の割合を欧州諸国並みに減らしていくことが,正常な日本の滅菌供給現場の将来像と考える。