近年,過酢酸製剤(PAA)はわが国の食品業界,とりわけ飲料工場では広く利用されている。過酢酸製剤は酢酸,過酸化水素,過酢酸および水から構成される平衡状態の混合物であり,芽胞に対し強い殺菌効果を示す。しかしながら,一部の微生物が過酢酸製剤に抵抗性を示し,特にPaenibacillus属芽胞のなかには抵抗性が極めて強い菌株が存在することから,衛生管理上の問題となっている。本研究では,P. favisporus PB-37株およびP. chibensis PB-434株芽胞の過酢酸耐性(カタラーゼ無処理および処理)を検討した。その結果,P. favisporus PB-37株およびP. chibensis PB-434株芽胞の過酢酸濃度2,000ppm(60℃)におけるD値は各々,74.2秒および50.9秒と強い抵抗性を示した。一方,カタラーゼ処理を行った過酢酸製剤をP. favisporus PB-37株芽胞に作用させたところ強い殺菌効果を示し,P. favisporus PB-37株の2,000ppmにおけるD値は40℃で48.5秒,50℃では19.0秒,60℃では≦2.3秒となった。以上の結果から,当該芽胞のspore coatにカタラーゼ活性がある可能性が示唆された。