ステンレス鋼表面に吸着した牛血製アルブミン(BSA)の除去における亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)の作用について,H+またはOH−の洗浄作用が発現しないpH 4.0~10.0の範囲で検討した。BSAの除去率はNaClO2水溶液のpHの低下とともに,またNaClO2の上昇とともに著しく上昇した。pH 4.0と5.0に調整した2.1M NaClO2水溶液を用いたとき,95%以上の除去率が得られた。NaClO2の洗浄効果のpH依存性は,NaClOのpH依存性とは大きく異なった。pH 4.0の0.09M NaClO2水溶液を用いた洗浄で得られた一次脱着速度定数(k)はアレニウス型の温度依存性を示した。kの見掛けの活性化エネルギーは120kJ/molと概算された。ゲルろ過クロマトグラフィー分析の結果,BSA分子はNaClO2によって部分的に幾つかの断片に分解されており,分解の程度はNaClO2水溶液のpHの低下とともに増加することが示された。以上の結果から,NaClO2水溶液の洗浄力は非解離型HClO2の酸化分解作用に強く依存することが示された。