日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.52,No.4 (2024)

表題:
家庭の安全・安心科学
-家庭における微生物汚染とその対策-
[11]ジビエ料理・安全に楽しむために
著者:
壁谷英則(日本大学 生物資源科学部 獣医学科 獣医食品衛生学研究室)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.4,pp.155−160(2024)

近年,全国的に猪や鹿など一部の野生動物の生息数が増加し,生息地の拡大が進んでおり,希少植物の食害,自然生態系の破壊,農林業や生活環境に対する甚大な被害が報告されている。増えすぎた野生動物に対して,わが国では「鳥獣被害防止特措法」ならびに「鳥獣保護法」を改正し,より積極的な駆除を推進し,それらの有効活用のため食用利用が進められている。捕獲鳥獣のジビエとしての食用利用量が増える一方で,野生鳥獣肉を原因とするO157志賀毒素産生大腸菌(STEC)やE型肝炎ウイルスによる食中毒事例も散発的に報告されているものの,野生鳥獣肉における食中毒発生のリスクについて,十分検討されていない。本稿では野生鳥獣肉のリスクとして,これまでの国内外の生物学的危害に関する報告事例を要約する。さらに,ジビエを安全に楽しむための試みとして「国産ジビエ流通規格認証制度」の概要を紹介するとともに,一般の消費者が注意すべき点を整理したい。

Key words:
Gibier(ジビエ)/Zoonosis(人獣共通感染症)/Food poisoning(食中毒)/Shiga Toxin Producing Escherichia coli(志賀毒素産生大腸菌)/Campylobacter(カンピロバクター).