現在,医療機器の電子線滅菌は一般的に行われている。ところが,医薬品に関しては,滅菌による成分劣化の理由から実施例は少ない。特に医薬品液剤の有効成分は,放射線照射の際,水の分解によって生成する,Hラジカル,OHラジカル,水和電子などの活性種によって分解することが多い。その結果,医薬品液剤を放射線滅菌することが困難であった。 本研究で,一部の医薬品液剤を低温で凍結し照射すると,氷結晶が加速電子や水由来の活性種をスカベンジし,有効成分の分解を防止することで有効成分の低下が抑制され,放射線滅菌が可能であることがわかった。