住環境のカビ汚染の現状について,20年余りの経時的な変化を踏まえて明らかにした。住宅のカビ被害は,梅雨時だけの問題だけではない。住宅の気密・断熱化や人工建材やエアコンの普及によって,冬のカビ汚染は増えてきたのに対して,夏のカビ汚染はむしろ減少する傾向が見られる。一方,浴室やシンクなどの水周りについてのカビ苦情は,清潔意識の向上に伴って増加している。水周りのカビは今日でも予防するのが難しい。さらに,新たなカビ汚染として,洗濯機や食洗機などが挙げられる。これらの電化製品は結露や水使用によって,カビの発生しやすい機器である。これらは,界面活性剤を好むカビや好温性のカビなどに対して新たな生育環境を生み出した。住環境のカビ問題は私たちの生活習慣と同様に,変化し続けている。これらの機器をどのように使用すれば,カビ汚染を抑制することができるかについて,ユーザーの立場からも検討した。