種々のグラム陽性菌とグラム陰性菌が作る大部分の溶血毒や細胞溶解毒は,標的膜に孔をあけて細胞を破壊する作用を持つ孔形成毒素(pore-forming toxin,PFT)と呼ばれるタンパク質である。医学細菌学の分野では,古くからPFTの病原性について研究されてきた。近年,PFTの自己集合と膜構築に関する研究がX線結晶構造解析によって行われるようになり,詳細なPFTの構造が明らかになってきた。さらにこれまで生物医学的な分野に限定されることが多かったPFTの研究がナノバイオ分野で使われだした。本稿ではこれらについて解説した。