ホタルルシフェラーゼを用いたATPの高感度迅速測定を微生物検査などの衛生管理に利用しようとする試みは古くからなされていたが,90年代に従来の微生物検査とは異なる"ATPふき取り検査"の概念が提起された。
この概念は,微生物ではなくATPそのものを汚染指標として捉え,食品を取り扱う機器や環境の清浄度を評価するものであったが,流通や外食等,微生物検査の困難な業種から普及が進み,衛生検査分野でのATP測定応用の牽引役となった。
一方,微生物測定への応用には,検出感度の低下を招く"微生物以外のATP"を測定系から除去することが課題であったが,除去すべきATPを酵素的に分解する技術が開発され、操作が簡便になると同時に濾過が困難な試料も測定対象とすることが出来るようになった。
本稿では,最初にホタルルシフェラーゼによるATP測定の原理について触れたあと,前述の"ATPふき取り検査"と"ATP法による迅速微生物検査"についてその原理と特徴ならびに活用事例,利用する際の留意点等について解説する。