食品を高温で短時間殺菌し,殺菌済みの包装容器に無菌的に包装する無菌充填食品の開発が進んでいる。レトルト食品に比較すると無菌充填食品は過度の加熱を避けることができるので,風味の劣化や栄養成分の破壊も少ない。無菌充填で問題となる微生物は主に芽胞菌であるが,比較的耐熱性の高い栄養細胞を持つMicrococcus属細菌や乳酸菌も腐敗変敗の原因となる。本講座では,無菌充填食品の製造で問題となる芽胞菌について説明し,実際に,そばつゆおよびチキンスープの無菌充填製品開発において実施した微生物制御の基礎となる製品からの微生物の単離,汚染微生物の同定,汚染微生物の製品中での生育挙動,加熱殺菌と食品添加物の併用による微生物制御に関する内容を紹介する。