食品製造機器の洗浄性は,機器の運転条件に依存して大きく異なる。たとえば,加熱操作が行われる機器では,汚れ成分の性状変化や乾燥が起こるため,洗浄効率は著しく減少する。特に,タンパク質が熱変性して機器表面に固着すると,通常のアルカリ洗浄では除去できない難洗浄性の汚れに変化する傾向が強い。一方,機器の材料として用いられるステンレス鋼においても,加熱条件の違いにより,表面に形成する不動態皮膜の化学組成や表面電荷特性は変化する。この変化は,特に溶接部において顕著に現れる傾向がある。ステンレス鋼の表面電荷が変化することは,界面でのタンパク質の離脱性とも密接に関連した現象である。第7回目は,洗浄性に影響を及ぼす諸因子として,タンパク質汚れとステンレス鋼の熱履歴,ステンレス鋼の不動態皮膜の化学組成と表面電荷特性の影響について解説する。