社会経済状況の変化と,いえづくりの為の新たな規基準への移行。住まいの造り方に"風通しの良い"仕組みを新木造にも生かすべき指針が示されたが,規基準の形骸化した解釈が新たな劣化要因を作り出している。
戦後木造では,戦時の空襲で木造建物が被った火災による甚大な被害に鑑み,木造住宅に防耐火措置に偏重した規基準がみられたが,震災以降は高耐震に傾倒したいえづくりが注目され,そこに潜む水湿分による生物劣化のリスクに対する配慮が欠けていた。
近年,「品確法」や「長期優良住宅」に則した品質性能を謳った木造住宅が建てられている。しかし,優良な資質を持たせるための技術規準に準拠しているにもかかわらず発生するベタ基礎が抱える劣化事故等には,形骸化した既存の技術概念が介在している。
又,高耐震性能を実現する為の工法の仕組が,気密化・高断熱化と相俟って新たな劣化リスクをもたらせている。長期優良住宅の施工には厳正な施工が求められているが,施工者や設計者が過去の経験から得た知見はそれに対処できていない。
基規準に示されている技術規準は過去に起きた事故の後追いであり,それにさえ準拠していれば良いという消極的な思考が蔓延し,耐久性についての新たな技術情報を取得し水湿分による不具合劣化の事象を見逃す事無く対処する上で本稿はその一助になればと思う。