近年,感染症危機管理として,新興・再興感染症,医療関連感染,バイオテロ対策などの取り組みが重要視されている。そのなかで新興感染症は,ワクチンや特異的な治療薬が存在せず,診断法や感染制御のための手段はごく限られたものとなっている。2013年度は,中国で発生した鳥インフルエンザH7N9,サウジアラビアを中心に発生している中東呼吸器症候群(MERS)などの新興感染症が国際的な問題となった。世界保健機関(WHO)は,地球規模感染症警報対応ネットワーク(GOARN)と国際保健規則(IHR)によって感染症対策を強化している。日本は2009年の新型インフルエンザH1N1の経験を踏まえて2011年に新型インフルエンザ対策行動計画を改正するとともに,2012年には新型インフルエンザ等対策特別措置法が制定された。鳥インフルエンザH7N9に対しては,感染症法に基づく指定感染症としての対応をとることになった。