病原微生物の医療機関内伝播の制御は,それぞれの医療機関にとって非常に重要な問題である。医療機関で従来行っている感染対策は,ユニバーサルに実施する標準予防策を除けば,感染経路別という明確に病原微生物が規定されて初めて実施する感染対策である。病原微生物が明確になるのは,患者が入院して,多くの場合,数日経過した時点である。このため,感染対策が後手にまわり,既に病棟内,医療機関内全体に伝播していることがある。
患者の領域という空間を意識しつつ,従来の標準予防策,経路別予防策である接触感染予防策,飛沫感染予防策,空気感染予防策を活用すれば,それぞれの状況に合わせた対策が実践できる。重大な感染性疾患に対しても対応が可能となるのである。まさに,空間を意識して,感染症から"身を守る"個人防御(手洗い,個人防護具,予防接種)が,病原微生物伝播の制御のために必要である。