食品の中でも特に,魚類は筋肉のもろさ,付着微生物の多さ,低温域でも自己消化酵素の活性が高いことなどから,自己消化が進み,腐敗・変敗を起こしやすい食材である。生鮮魚から多く検出されるのはビブリオ科の細菌であるが,低温貯蔵ではPseudomonas属,Shewanella属など低温に強い菌が優勢となる。これらを抑制するためにガス置換包装(MAP)を施すと,乳酸菌およびCO2耐性のPhotobacterium phosphoreumなどが優勢となる。魚肉は炭水化物が少なく,タンパク質および遊離アミノ酸,ペプチドが多く,トリメチルアミンオキサイド(TMAO)が多く含まれている。筋肉中の内在性酵素により,自己消化が進むと,腐敗を起こさせる菌群はアミン類,アンモニア,有機酸,硫化物をアミノ酸から生成し,これらが腐敗,変敗臭の原因となる。腐敗・変敗の防止のためには微生物の増殖を抑制することが必須であり,スモークサーモンなどでは乳酸菌による制御法が報告されている。