放出制御製剤の目的は,薬理作用の増強と持続,副作用の低減,利便性の向上である。放出制御には,薬物の溶解律速,薬物貯蔵庫を包む膜あるいは薬物を包含するマトリックス中での薬物の拡散律速,放出障壁の体内での溶解・分解律速を利用する。さらに,浸透圧や外部刺激による放出制御も開発されている。実際の例として,異なる溶解速度のポリマーでコーティングした経口投与顆粒剤,薬物自身の難溶化による徐放や生体内分解性ポリマーによるマイクロカプセル化による徐放性注射剤などを紹介する。なお,徐放製剤を製剤設計する際には,徐放によって目的の薬理効果が確かに得られることの事前の検証が重要である。さらに将来必要な製剤として,パルス状の放出制御と細胞製剤の利用がある。後者では遺伝子を導入して連続的薬物産生を強化し,細胞膜のバイオセンサー機能により必要な時に薬物が放出できる。特に,自己の間質系幹細胞を利用する方法が期待される。