専門家と市民との間にある意識の乖離が様々な社会的歪をもたらしており,これを1972年にワインバーグによって提唱された概念「トランスサイエンス」を基盤に考えてみることにした。科学だけでは解決できない問題があり,それに対して科学を超えたものという意味で導入された用語であるが,1999年に開催された国際会議では「これからの科学は社会の中の科学,社会のための科学」とし,「21世紀はトランスサイエンスの時代」というキーフレーズを用いた宣言が採択された。現在,科学のあり方はそうした考え方が世界の潮流になっていることを示すとともに,我が国の科学技術政策もこの流れできていることを紹介した。