トランスサイエンスの意味を理解する上で,事例として「遺伝子組換え食品」と「核融合炉開発」を題材とした構図を示した。17世紀以来の学術の発展とともに個別に展開されている自然科学・人文科学・社会科学で三者に重なる部分が生じてきたことを解説し,そうした領域に触れないで社会のための科学,社会の中の科学を論じられないことを詳述した。加えて,そこから自然科学の立場から,学術が政治に隷属することがあってはならず,同時に専門分野の学術研究者・技術者として知らず知らずのうちに,思い上がりやおごりがないかという点にも言及した。