1980年代に入る頃から,欧米を中心に室内空気汚染に起因するシックビルシンドローム(Sick Building Syndromes,SBS)が多くみられるようになった。SBSは症候群であり,医学的に確立した単一の疾患ではなく,諸環境要素に関わる,居住者に由来するさまざまな健康障害の総称を意味している。Mendellが1984~1992年間で発表された32の大規模な研究の結果についてレビューを行い,環境要素と症候の関係に①常にある,②殆どある,③一貫して不十分,及び④たまにしかない,との4つのカテゴリに分類した結果,①になる唯一の項目は空調システムであった。SBSが“原因物質は特定されない”ものであるのに対して,原因物質が特定できるものはビル関連病(Building Related Illness,BRI)と呼ばれる。BRIの例として挙げられるのは,レジオネラ,加湿器熱,過敏性肺炎などがあり,何れも空調系に関係するものである。本文では,空調システムにおける微生物汚染問題の性質,汚染の実態,およびその対策方法について述べる。