EMA-PCR法は,PCRの迅速性に生菌選択性のメリットが加わった画期的な手法であり,細菌検査のみならず,殺菌効果の検証や腸内細菌の生存率の確認等,さまざまな場面での活用が模索されている。本項では,EMA-PCR法とその進化型であるLC EMA-qPCR法を紹介する。EMA(ethidium monoazide)は核酸に結合するインターカレーターの一種であり,光照射により核酸に共有結合する。EMA-PCR法は,EMAのこのような性質を利用して,生菌由来DNAをPCRで選択的に検出する手法である。操作法は従来のPCR法と同様で比較的容易であるが,菌種や検体の性状,PCR増幅サイズ等,様々な要因を考慮してEMA処理条件を最適化する必要がある。LC EMA-qPCR法は,レジオネラ属菌の検出法として開発され,液体培養による生菌の増殖とEMA処理による死菌由来の検出抑制を組み合わせることにより,より確実な生菌選択的検出を可能とした手法である。浴槽水176検体を用いて,従来の平板培養法とLC EMA-qPCR法によるレジオネラ属菌検出結果を比較したところ,感度89.5%,特異度73.9%で高い相関性を示す結果が得られており,培養検査前の迅速なスクリーニング検査法としての活用が期待されている。