チルド食品の保存性向上にむけて,農産物チルド食品から分離した低温性細菌芽胞の発育特性と耐熱性を評価した。分離した20株の属種名は,分子生物学的手法により,全てPaenibacillus属細菌と推定された。20株のうち,低温,低pHでの発育能が高く,形成する芽胞の耐熱性が最も高かった製品由来のPaenibacillus sp. No.1を制御対象菌として選定し,芽胞の耐熱性を評価した。90〜105℃におけるD値から求めたz値は8.1℃であった。pH 4.0〜5.5におけるD値から,加熱培地の酸性化により耐熱性が低下した。また,D値は,加熱処理後の芽胞の培養条件に影響された。至適条件から求めた芽胞のD値と比較すると,低温で培養した場合には30%,低pHで培養した場合には40%,低温,低pHで培養した場合には50%それぞれD値が低下した。これらのことから,チルド食品の保存性向上には加熱温度や製品pHの検討が重要であることが示唆された。また,過加熱を防ぐためには,D値の算出条件にも配慮する必要がある。