近年,食品の期限表示の偽装問題や食品への異物混入などが頻発し,食品の安全に対する関心が非常に高まっている。「食品防御(フードディフェンス)」という言葉は,繰り返しメディアに取り上げられ広く消費者にも知られる概念となった。「食品防御」は食品の安全を構成する3つの要素の一つであり,「食品を対象とした攻撃(意図的な異物混入や汚染等)に対し防御するための安全管理」である。食品への意図的な異物混入は,どのような対策をとっても完全に防御することはできないと考えられるが,食品防御対策の必要性に気づき,衛生管理や衛生教育の一環として「食品防御の考え方」を取り入れ,社員全てがその意識付けを持つことで意図的な異物混入のリスクを減らすことは可能である。事業者が自社の脆弱性評価に基づいて,優先順位も考慮の上,計画的に防御対策を整えていくことが大切である。物理的な食品防御対策ばかりではなく,労使の良好な信頼関係を構築し,食品防御に関する教育を実施し,危機管理体制も含めた整備を早急に整えることが望まれる。