カット果実製造時の微生物汚染防御法として,剥皮の過程で利用できる酵素剥皮技術がある。酵素剥皮は,果実を主にペクチン分解酵素やセルロース分解酵素に一定時間含浸することで,細胞間隙のペクチンを分解し,果皮を軟化・溶解して,容易に剥皮する技術である。従来のナイフを使用した剥皮に比べて,剥皮果実の外観,物性,成分含量,官能評価に優れることが報告されているが,ナイフを使用しないために,果皮から果肉への微生物の移行をなくし,微生物的品質と安全性の高いカット果実を製造することも可能となる。本稿では,カキ果実およびカンキツ果実を対象に,筆者らが試みた酵素剥皮によるカット果実の製造およびその後の貯蔵中の微生物的品質を中心に,それらの実用化を前提に紹介する。