日本人従業員による食品への農薬混入事件によりフード・ディフェンスの気運が飛躍的に高まったのを受け,食品関連企業は自主的,あるいは取引先の要求やコンサルタントの指導により対策を検討してきた。著者は中立的な立場で食品工場等の監査・指導を実施しているが,そのなかで経営者や管理者,現場の従業員など様々な立場の関係者から聞こえて来る疑問の声を紹介した。フード・ディフェンスのための過剰ともいえる対応や,かえって従業員の反感を買うような取り組みについての疑問の声,さらにはフード・ディフェンスのあるべき姿についての疑問も数多い。そこで,しばしば議論に取り上げられる監視カメラの設置や薬剤管理などを例に,フード・ディフェンス計画の構築や見直しのための具体的な考え方や従業員教育の必要性及びその重要性を整理した。