微生物制御技術をこれから学ぼうとする日本防菌防黴学会員の若手技術者に向けた講座「やさしい微生物制御の基礎[18]」,薬剤微生物制御 その1では定量的構造活性礎環(QSAR)による抗菌剤の分子設計について解説した。第四アンモニウム塩に分類されるヨウ化N-アルキルピリジニウムをリード化合物に用い,物理化学的パラメーターとして薬剤分子疎水性(log P, RM),酸解離定数(pKa),NMRのδ,細菌細胞面疎水性(log HI),細胞破壊活性(log CVC)を用いたQSARの手法について解説した。一連の回帰分析の結果から,殺菌効果と静菌効果は薬剤分子疎水性の二次関数で表され,MICやMBCの菌種による差違が起こる要因や定常期と対数増殖期の薬剤感受性の差違の要因などが細菌表面疎水性と薬剤の疎水性に依存することを解説した。また,細菌細胞破壊活性と殺菌活性関係を用いてアンモニウム塩の作用機構について解説し,新規薬剤の分子設計指針を示した。