東京オリンピックを契機に食品関係の安全度,信頼度を高めようとする動きが活発化している。しかし国内の食品加工業者の多くを占める小規模事業者において,情報不足もあり食品防御(フードディフェンス)への対応はほとんど進んでいない。行政には基本的な衛生管理の指導ばかりでなく,食品防御,食品表示ルールの運用について,さらに厚いご指導をお願いしたい。小規模事業者の食品防御は,物量が少ない,つまり結果的に被害が小さい場合に防御の厳重度は加減されるので,大規模工場と同レベルの対策は必要ないと考えるが,今後人手不足はさらに厳しくなり,職場の労働環境や個人の仕事の満足度低下が懸念されており,対策は急務である。まずは経営者が主体となり,日本流の家庭的な社内体制を壊さないように「フードディフェンス」という言葉をあえて使わずに,従業員とともに「外部からの防犯強化」および「従業員満足度の追求」を推進することが有効と考える。小規模事業者においては,経営者が「従業員ファースト」を心掛けることが食品防御の第一歩である。