大腸菌のEGCgによる菌体損傷は処理1h程度では非選択培地で回復可能な損傷であったが,処理4hを経過すると回復しなかった。EGCgの大腸菌に対する抗菌作用機構解明のため,EGCgで1h処理した菌体からRNAを調製してDNAマイクロアレイ解析によりEGCg処理の遺伝子発現に対する影響を網羅的に調べた。EGCg処理により転写量が増加した遺伝子は34個,減少した遺伝子は8個であった。これらのうち,リアルタイムPCRでも2倍以上の増加が確認された遺伝子の欠損株において野生株に比べてEGCgに対する感受性が増加したのは,ΔmdtA,ΔyhdV,ΔyhfYであった。mdtBは,リアルタイムPCRでは2倍以上の発現量増加は認められなかったが,遺伝子欠損株のEGCg感受性は野生株より高かった。以上の結果から,EGCg処理4h程度までは,ストレス応答系としてBaeSRシステムが誘導され,RND型多剤トランスポーター遺伝子mdtABCが発現してEGCgの作用を緩和している可能性が考えられた。