黒湯におけるLegionella属菌の汚染状況を調査し,殺菌効果の現状を把握することを目的とした。2016年4月から12月にかけて東京都内を中心に関東地域の入浴施設(51施設)から採取した70試料,および北海道の入浴施設(9施設)から採取した16試料の計86試料の黒湯について試験したところ,全体では86試料中11試料(12.8%)から分離された。地域別では,関東では70試料中6試料(8.6%)であったが,北海道では16試料中5試料(31.3%)と高率であり,有意差が認められた(p<0.05)。Legionella属菌が分離された11試料における黒湯100mL当たりのLegionella属菌数は,1.0×101CFUから最高1.0×103CFUであり,102CFU未満が6試料(54.5%)と最も多かった。分離されたLegionella属菌15株のうち,L. pneumophilaが86.7%(13株)を占め,優占種であり,血清群別においては,3群が4株(26.7%)と最も多かった。 一方,パルサー法によるLegionella属菌の検出では,全体で81試料(94.2%)から検出され,地域別の検出率では顕著な差は認められなかった。培養法との比較では,培養法で陽性であった11試料は,パルサー法においてもすべて陽性であった。また,培養法で陰性であった75試料のうち,パルサー法においても陰性であった試料はわずか5試料のみであり,残り70試料はパルサー法では陽性であった。このことから,両試験法の一致率はわずか18.6%に過ぎなかった。