近年,環境汚染菌による院内感染が報告され,環境整備の重要性が認められつつある。今回,消毒剤および除菌剤の除染効果を比較検討するため,環境中の細菌の生存状態とATP測定の基礎的検討と各種消毒剤または除菌剤を含浸させたワイプによる拭き取り効果について検討した。乾燥による生菌数への影響に関する検討では,一定の濃度に調製した多剤耐性Acinetobacter baumanniiおよびBacillus cereusを乾燥状態で放置し,経時的に細菌数の指標としてATP値とコロニー数を計測した。シャーレの中で乾燥状態にしたB. cereusは1日目でATP値が有意に低下したが,A. baumanniiは有意な低下を認めるまでに7日間を要した。7日目のコロニー数を計測したところ,A. baumanniiおよびB. cereus共に生菌として検出された。拭き取りによる除菌効果は,ステンレス板とポリプロピレン板にA. baumanniiおよびB. cereusを塗布し,上記消毒剤または除菌剤含浸ワイプで拭き取り,その前後におけるATP量およびコロニー数を比較検討した。拭き取り効果は,材質による差は認められなかった。また,いずれの含浸ワイプによる拭き取りにおいても同様に有意な菌数の低下が認められ,いずれの細菌に対しても消毒剤または除菌剤は5log10CFU以上の減少を認めた。