外科手術に伴う感染のリスクは,術前・術中・術後のいずれのタイミングにも存在する。特に手術操作や手術に付随する患者管理に関連して術後に発生する術後感染症は,もっとも多くみられる合併症であるが,これをいかにコントロールするかが自施設の手術成績を大きく左右する。心臓血管外科では多くの合併疾患を有する高齢の患者に対して人工弁や人工血管などのデバイスを挿入したり,人工心肺などを用いて長時間の手術を施行したりすることが多く,残念ながらある程度の頻度でsurgical site infection(SSI)が生じている。一旦,デバイスの感染を生じた場合は非常に難治性となる。それ故にデバイスを使用する機会の多い心臓血管外科領域の手術ではSSIを生じさせないことが非常に大切である。私たちは安全・安心の医療を提供するために,病院の組織横断的に多職種の力を合わせ感染制御に取り組む必要がある。