多様な細菌が渡り鳥とともに長距離移動している実態を知るために,次世代シーケンサーを用いて,細菌群集を培養することなく網羅的に解析した。冬鳥であるヒドリガモの糞を琵琶湖付近で採取し,糞に含まれる細菌の現存量および細菌群集構造を解析した。核酸染色剤による直接計数法により細菌現存量を測定したところ,3.2×108cells/gであった。また次世代シーケンサーを用いて,細菌の16S rRNA遺伝子のV4領域を網羅的に解析したところ,ヒドリガモの腸内細菌には門レベルでは,Proteobacteriaが45.1%,Firmicutesが51.7%となり,この両者で平均約97%を占めることがわかった。科レベルではEnterobacteriaceae,Bacillaceae,Paenibacillaceae,Clostridiaceae,Pseudomonadaceaeが多いことがわかった。また,Pantoea属,Clostridium属,Escherichia/Shigella属,Helicobacter属,Serratia属などヒトに病原性を示すものが0.1%以上の割合で含まれており,それらが長距離移動する可能性が考えられた。