平成25~28年の日本における魚介類および魚介類加工品による食中毒のうち,53.1%を寄生虫性食中毒が占める,1990年代に6割を占めた細菌性食中毒は2.1%と激減している。寄生虫性食中毒の発生件数の増加は,アニサキス食中毒の増加と関連し,生鮮魚介類の低温流通システムの発達によるサバなどの生食が一因と考えられる。各寄生虫性食中毒対策として,加熱,凍結の条件が推奨される一方,養殖魚のエサや環境のコントロール,流通段階における寄生虫検出の効率化など対策が進んでいる。水産食品におけるノロウイルス食中毒は,8割がカキを原因食に含んでおり,カキの加熱条件の推奨,生産業者と自治体が連携したかきの取り扱いに関する取り組みがみられる。水産加工施設における衛生管理手法として,HACCP(危害分析重要管理点)の導入が食品等事業者を対象にHACCPの制度化を進められている。特に,水産物の輸出の際に,輸出先国の基準に合わせ加工施設のHACCP導入および漁港,市場などの登録が必要な場合があり,今後,さらなる衛生管理の充実が求められる。