日本防菌防黴学会

学会のご案内

関連情報

  • English

日本防菌防黴学会誌

Vol.46,No.5 (2018)

表題:
医療・食品・環境分野で注目される抗菌技術
2.近紫外線LED殺菌
著者:
牧野美鈴,高橋 章(徳島大学大学院医歯薬学研究部予防環境栄養学分野),宮脇克行(徳島大学大学院社会産業理工学研究部生物資源生産科学分野)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.46,No.5,pp.211−216(2018)

近年,食糧・環境・資源に関する社会状況が人々の植物工場への関心を強めている。その背景には,食の安全・安心等に関する消費者要求,地球温暖化・異常気象等,省資源への意識の高まりなどがある。
植物工場では養液を循環する水耕栽培が多用されているが,病原菌が何らかの原因で混入すると急激に増殖・拡散し,品質低下や食中毒の原因となる。そこで養液殺菌が重要となる。養液殺菌の方法の中で,紫外線殺菌は,殺菌対象物に残留物を残さない点で優れており,波長の長い近紫外線(UVA)による殺菌は,光回復現象が起こりにくく物質への透過性が高いなどの利点がある。さらに,UVA-LEDを使用することで,装置の耐久性が向上し,水銀性廃棄物などの環境負荷物質の削減が可能となる。そこでUVA-LEDを組み込んだ殺菌装置の開発を行った。殺菌装置は養液槽から養液を汲み出し,照射部を通過させることで殺菌を行い,再び養液槽内に戻す仕組みを考案した。この循環型殺菌装置では,植物の栽培をしながら殺菌を行うことができた。
今後は,UVA-LED殺菌装置の実用化に向けて,規模の大きい植物工場にも適応させるなど,より汎用性の高い殺菌装置を目指す必要があると考えられた。

Key words:
Near-ultraviolet(近紫外線)/Light-emitting diode(LED)/Sterilization(殺菌).