従来デングウイルス感染症は熱帯・亜熱帯地域と関連する輸入感染症と考えられていたが,2014年に都内を中心にヒトスジシマカを媒介蚊とする約160例の国内感染が発生し,医療従事者以外の関心も集める疾患となった。本症の予後は大多数の感染者で良好であるが一部で重症化し,血管透過性の亢進による血漿漏出が重症化の原因と考えられている。その発生機序としてADE説やNS-1抗原誘因説などが提唱されているが,詳細は不明である。妊婦が本症に罹患すれば流産率が高くなり,妊婦自身の死亡率も高くなるとの報告がある。本州ではヒトスジシマカは成虫で越冬できず,デングウイルスの経卵感染率は低いことから,熱帯・亜熱帯地域からデングウイルスが本州の諸都市に持ち込まれても,定着することはなく一過性に経過すると推測される。デングワクチンは海外で認可されたものもあるが,臨床試験中のワクチンも複数存在し,有効性の高いワクチンの実用化が期待されている。