日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.46,No.7 (2018)

表題:
抗菌試験環境下における金属銀ナノ粒子の化学状態と抗菌活性との関係(原著論文)
著者:
豊田桃子,清野智史,中川 貴,山本孝夫(大阪大学大学院工学研究科),射本康夫(大阪大学大学院工学研究科,一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター),中嶋絵里(一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.46,No.7,pp.277−284(2018)

抗微生物試験の多くは,試験対象となる微生物ごとに選択する添加物を含む水溶液系で実施される。一方で,試験環境に存在する化学物質が,抗微生物剤の活性に大きく影響を及ぼすことも知られている。本研究では,無機系抗菌剤である金属銀ナノ粒子をモデルとして,抗微生物試験環境下の化学状態がどのように変化するかを評価し,その失活要因の検討を目的とした。具体的には,金属銀ナノ粒子が環境中の含チオール物質とどのように相互作用するかを評価した。また金属銀ナノ粒子の抗菌試験を行うにあたって,NB培地の培地濃度が異なる環境下で抗菌試験を行い,それぞれの試験環境における銀の化学状態を比較した。その結果,NB培地濃度と抗菌活性には相関が見られ,その時の銀の化学状態は金属とは異なる状態に変化していることが分かった。即ち,チオール基を持つアミノ酸やポリペプチドが実使用環境に存在する場合,金属銀ナノ粒子の抗菌活性が阻害されることが示唆された。チオール基は様々な金属と強く配位するので,銀ナノ粒子以外の他の無機系抗菌剤を使用する場合であっても,抗菌活性に影響を及ぼす可能性を考慮する必要がある。

Key words:
Silver nanoparticle(銀ナノ粒子)/Antibacterial activity(抗菌活性)/NB medium(NB培地)/Antibacterial agent(抗菌剤)/XANES Analysis.