日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.46,No.8 (2018)

表題:
黒湯(腐食質含有温泉)から分離されたLegionella pneumophilaに対する電解水の消毒効果(原著論文)
著者:
安齋博文,石﨑直人,李 新一,古畑勝則(麻布大学)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.46,No.8,pp.343−347(2018)

黒湯(腐植質含有温泉)では従来の塩素系薬剤による消毒効果の低下が懸念されたことから,次亜塩素酸ナトリウムに代わる新たな消毒剤として電解水に注目し,その消毒効果について検討を行った。東京都品川区で採水した腐植質140mg/Lの黒湯(pH8.4)をろ過滅菌して試験水とし,黒湯から分離したLegionella pneumophila(37-3株)血清群1群を供試株として試験に用いた。 次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒実験において,残留塩素濃度0.8mg/Lの場合,蒸留水中では60分経過後の死滅率は約99.999%と高い消毒効果が認められたが,黒湯中ではわずか約95.142%の死滅率に過ぎず,消毒効果は著しく低下した。一方,残留塩素濃度0.8mg/Lの電解水の消毒実験において,蒸留水中では微酸性電解水と電解次亜塩素酸ナトリウム水は,ともに次亜塩素酸ナトリウムの場合と同様で60分経過後の死滅率は99.999%以上であり,良好な消毒効果が認められ,消毒剤による差異は認められなかった。ところが黒湯中では,微酸性電解水による60分経過後の死滅率は約99.962%,電解次亜塩素酸ナトリウム水では約99.671%であった。このように,黒湯中では,いずれの消毒剤も蒸留水と比較して著しい消毒効果の減少が認められた。しかしながら,微酸性電解水では,次亜塩素酸ナトリウムの死滅率約95.142%と比較して2オーダー良好な消毒効果が認められた。

Key words:
Legionella spp.(レジオネラ属菌)/Hot spring water(温泉水)/Humus(腐植質)/Slightly acidic electrolyzed water(微酸性電解水)/Electrolytic sodium hypochlorite water(電解次亜塩素酸ナトリウム水).