ベトナムと共同で実施された地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム「薬剤耐性細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリングシステムの開発」において,薬剤耐性菌発生の背景に疑われる,抗菌剤使用の現状を推定することを目的として食品中の残留抗菌剤実態調査を行った。試料は豚肉,牛肉,鶏肉,卵,魚,エビとし,と畜場,卸売市場,小売店など様々な流通段階から合計1411検体を収集した。分析はホーチミン市公衆衛生院で実施し,サルファ剤,キノロン剤,βラクタム剤などを液体クロマトグラフタンデム型質量分析装置(LC-MS/MS)により測定した。その結果,豚肉からはスルファメタジン,鶏肉,卵,水産物からはエンロフロキサシンの検出例が多く,1mg/kg以上の残留がみられた試料も存在した。全体的な残留抗菌剤の検出率は12%であり,日本と比較して高い確率で食品中に抗菌剤が残留している実態が明らかとなった。