食品ロスの削減策のひとつとして,食品をガス置換包装(Modified atmosphere packaging(MAP))し,その保存性を向上させ,消費期限を延長させることは有効な手段である。最近,食品業界ではMAPすることで食品の消費期限を延長させ,食品ロスを低減させる動きが広がっている。既に一部の食肉や惣菜類では,新開発のバリア容器を使用してMAPした製品が実用化されているが,2000年代以降,国内でMAPが食品の保存性に及ぼすことを示したデータはほとんど見当たらない。そこで本論文では,廃棄量が多いとされる食肉への適用を想定し,MAPした牛肉,豚肉および鶏肉の保存試験を実施し,これらの保存性向上の可能性について検討した。その結果,MAP品と非MAP品を同一温度で比較すると,豚小間肉の5℃で4日以上,10℃で2日,牛小間肉の5℃および10℃で2日,鶏もも肉の5℃および10℃でも2日保存性が向上した。以上のことから,食肉の保存温度が10℃以下であれば,CO2ガスの静菌作用によるMAPとの相乗効果が期待され,2日程度の保存性向上が期待できることが推察された。