近年,世界中で薬剤耐性菌の発生・蔓延が問題となり,特に東南アジア地域は市中健常人の薬剤耐性菌保菌率が,世界の他の地域に比べ極めて高くなっている。この原因究明と流通食品の薬剤耐性菌・抗菌剤汚染状況のモニタリング体制構築を目指したSATREPSプロジェクトにおいて,著者らは食品生産サイトにおける抗菌剤の使用実態把握のために環境水中の残留抗菌剤の解析を実施した。その結果,sulfamethoxazole,sulfamethazineなどのサルファ剤,ofloxacinなどのキノロン剤,さらにはampicillinの分解産物が高頻度に検出され,これらの抗菌剤が周辺地域で大量に使用されている実態が推測された。一方,抗菌剤のみならず,抗がん剤,向精神薬,抗ウイルス薬など様々な医薬品が,環境水中から検出されており,これらが生態系を乱したり,生活水に混入することで,ヒトの健康にも影響を与えたりするリスクが問題視されており,環境モニタリング,処理手法開発など今後の研究の進展が望まれる。