家畜排せつ物や生ごみなどの廃棄物を処理する方法として,メタン発酵法が知られている。発酵過程で出る発酵熱やメタンガスなどが回収され,エネルギーとして利用できるため,国内外で実用化されている。また,発酵後に排出されるメタン発酵消化液は,無機態及び有機態のN,P,Kなどの肥料成分を含んでいるため,近年価格が高騰する化学肥料の代替としての有効利用が期待されている。しかし,豚糞などの排せつ物由来であるメタン発酵消化液に混入した病原性細菌による食中毒被害も懸念されている。本研究では,メタン発酵施設維持が容易な中温処理を用いて,病原性細菌(Salmonella enterica)の菌濃度変化を調査し,メタン生成量がSalmonella entericaの菌濃度の減少と正の相関を持つことを示した。本研究結果は,安定化前の中温メタン発酵施設を安全に維持運営することに役立つだろう。