筆者ら大阪府立公衆衛生研究所の食品微生物ワーキンググループは,食品における薬剤耐性菌の汚染状況の把握とその解析を担当した。薬剤耐性菌はその発生メカニズムから抗生物質が使用される畜水産現場での発生が懸念される。そこで,ターゲットの食品は食肉(鶏肉,豚肉,牛肉)と魚介類(淡水産養殖魚,エビ)とした。さらに,食品流通過程における上流としてと畜場,食鳥処理場,および中央卸売市場,下流として市民に提供される直前のスーパーマーケットをサンプリング場所に選定した。合計330検体を収集した結果,ESBL/pAmpC産生大腸菌の汚染状況や多剤耐性度については鶏肉がもっとも高いこと,また,スーパーマーケットでの食肉の不適切な取扱いがESBL/pAmpC産生大腸菌の増殖とクロスコンタミネーションを助長していることなどを明らかにした。さらに,食品汚染サルモネラの血清型と薬剤耐性,高度バンコマイシン耐性の新種Enterococcus saigonensisの発見と提唱も行ったので,あわせて紹介する。