医療施設における我が国の感染防止対策は1996年の米国CDCガイドラインおよびそれ以後の改訂版を基に整備されてきた。さらに医療施設関連感染に対する社会的な関心の高まりとともに,感染防止対策の徹底について努力が払われてきた。その結果日本の医療現場における感染対策は高い水準となった。現在医療で行われている感染防止対策は科学的根拠に基づく対策であり,老人保健施設,学校などでも適用が推奨される。そこで本稿では医療で行われる感染防止対策の考え方と方法を詳述した。まず標準予防策の説明,次に感染経路別対策と対象となる主要微生物について述べた。次いで医療施設で行われる消毒・滅菌の方法とその問題点,すなわち皮膚・粘膜の消毒,特に手指の清潔,リネン類などの消毒・滅菌,医療環境の消毒などについて述べた。さらに手袋着脱手技など医療手技の基本的な清潔操作についても加えた。このような感染防止対策の方法が食中毒防止対策にも役立つことが期待される。