大量調理では,小規模調理よりも調理終了後から喫食までの時間が長いために食中毒のリスクが増す。また,一度に同じ料理をたくさんの人数が食すため食中毒事件が大規模化しやすい。よって種々の衛生管理マニュアルを活用して食中毒を防止していく必要がある。本稿では,個別事例として2件の食中毒事件を紹介した。これらの食中毒事件においてはいずれも死者が出た。これらの事例などを受けて,新たな食中毒防止対策が考えられてきている。対策マニュアルとしては,「大量調理施設衛生管理マニュアル」等の二つの概要を紹介した。また,これらを活用した給食施設の取り組み例として「給食施設におけるHACCPリスト」を,また個別の料理についての例として「きゅうりのゆかり和え工程のHACCPリスト」を示した。このようにリスクを分析・明示することが重要である。また,これと同程度に重要なこととして,「従業員の衛生教育」および「衛生管理者の危機管理意識」の重要性が挙げられる。さらに今後は,ゼロリスクが不可能であることを周知しつつ,利用者側の食中毒に対する抵抗力を高めていくことが求められてくるだろう。