日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.2 (2019)

表題:
医療・食品・環境分野で注目される抗菌技術
7.天然物系抗菌剤(香辛料・ハーブ・漢方)
著者:
中野宏幸(広島大学大学院生物圏科学研究科)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.2,pp.75−82(2019)

香辛料,ハーブ,漢方食材の抽出液について,食中毒細菌や食品腐敗細菌に対する抗菌性を試験し,天然物系抗菌剤としての評価を行った。約90種の検体について完全発育阻止濃度(MIC)を測定したところ,黄色ブドウ球菌やBacillus属細菌などグラム陽性菌に対するレモンユーカリ,カレープランツ,甘草のエタノール抽出液は0.025−0.05%と高く,メース,ナツメグ,クローブがそれらに続いた。これらの効果は,寒天培地や食品モデルでの接種保存試験において,低酸性条件(pH 5.5−6.0)や静菌剤のグリシンや酢酸ナトリウムとの併用で効果は増大し,ハードル効果がみられた。また,ボツリヌス菌に対して発色剤の亜硝酸ナトリウムとナツメグ,クローブ等の香辛料抽出液は,単独では抑制しない微量濃度でも両者を組み合わせると完全発育抑制した。グラム陰性菌に対する効果は低かったが,クローブ,ローズマリーはクエン酸あるいはEDTAとの併用で効果を示した。また,一部の植物抽出液はボツリヌス菌芽胞の耐熱性を低下させ,香辛料,ハーブ,漢方などの抽出液は食品の微生物制御手段として有用と思われた。

Key words:
香辛料/ハーブ/漢方/抗菌性/MIC/ハードルテクノロジー/食中毒細菌/芽胞/D値.