モデル循環式浴槽の実験から,循環式浴槽におけるレジオネラ属菌の増殖メカニズムが明らかとなった。消毒されていない循環式浴槽水中では,自然汚染による一般細菌数や従属栄養細菌数の増加に引き続き,それらを捕食するアメーバの増殖が起きた。次にそのアメーバ内で増えたと思われるレジオネラ属菌が浴槽水中に浮遊・拡散し,ろ過器内や配管表面等の循環系全体でバイオフィルムを形成した。レジオネラ属菌の増殖とバイオフィルムの形成は湯温が53℃より低い貯湯槽内でも確認された。レジオネラ属菌は河川,土壌などの自然環境に存在し,土埃などに付着して浴槽水を汚染すると考えられる。浴槽水のレジオネラ属菌の汚染自体を防止することは難しく,循環式浴槽のレジオネラ対策は,浴槽水中での本菌の増殖防止と,バイオフィルム形成阻止の両面への対応が中心になるであろう。