近年,温水洗浄便座の普及率は増加傾向であり,相当数の人が温水洗浄便座を使用していると推測されるが,温水洗浄便座使用時の細菌学的実態はほとんど知られていない。そこで,A大学構内の温水洗浄便座のノズルからEscherichia coli,Pseudomonas aeruginosaおよびStaphylococcus属菌の分離を試みた。全体では280試料のうち,E. coliが19試料(6.8%),P. aeruginosaが8試料(2.9%),Staphylococcus属菌が41試料(14.6%)からそれぞれ分離された。Staphylococcus属菌で分離同定された6菌種のうち,最も分離株が多かった菌種はS. epidermidisの9株(39.1%)で,次に,S. lentusが6株(26.1%),S. aureusが3株(13.0%)であった。このように,温水洗浄便座のノズルには単純性膀胱炎や細菌性膣症などの起因菌が付着していることが明らかになった。