ベトナムではESBL産生耐性菌の保菌者が著しく増加しており,農村部においては,健常人と食品における感染・汚染が深刻な状況であることが明らかになった。これに対し,コミュニティにおける感染を公衆衛生学的に抑制するための介入モデルを構築することとした。ワンヘルスの理念に基づき,ヒトだけでなく,動物(家畜)や環境におけるリスクファクターを明らかにし,これに対してコミュニケーションを中心とした介入によって,これを制御しようとしたものである。ハノイ市のバビ県において,公衆衛生学的な予備調査によって4つのリスクファクターを明らかにし,これをベースとして8つの項目についてKAP調査を行った。その結果に基づいて,コミュニケーションを中心とした活動を半年の間,実施した。その前後に,健常人の糞便と,参加世帯の生活環境について微生物学的な調査を行い,その比較に評価を行った。その結果,健常人のESBL産生大腸菌の保菌率は59.9%から35.2%に減少し,生活環境についても有意な改善が見られた。