著者らが参画するレジオネラ対策の厚生労働科学研究班では,米国の水道で実用化されているモノクロラミン消毒を入浴施設へ応用する研究を進めてきた。本稿では,研究班が実施したモノクロラミンのレジオネラやアメーバの不活化等に関する実験データや,実際の入浴施設での消毒試験データ等を紹介する。これらの研究成果を根拠に,2015年の厚労省の「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」の改正時に,モノクロラミン消毒は循環式浴槽水の新たな消毒方法として認められた。アルカリ泉質や,アンモニア,鉄・マンガンイオン等を含む温泉を使用する循環式浴槽水の消毒には,アルカリ条件下でも殺菌効果が高く,遊離塩素よりも濃度安定性があるモノクロラミン消毒が適している。今後,モノクロラミン消毒は遊離塩素消毒が難しい泉質を中心に導入され,優れたレジオネラ属菌対策として,施設の衛生管理と,利用者の安全性の向上に役立てられることを期待したい。