損傷菌とは何かは,本質的には生命とは何か,死とは何かの問題に繋がっている,通常,損傷菌とは,人為的な殺滅処理を曝された微生物細胞の中では重篤なものから軽微なものと分布が生じ,生死判定に用いる手法によっては,生菌を死菌として過大評価で計測するために微生物的安全性を脅かしかねない重大問題であると認知はされてきている。しかしながら現在の各種公定法では損傷菌の存在は全く考慮されていない。実際,微生物自体の履歴,多様性,殺滅処理の違いによって全てに共通する標準法の策定は困難でもある。本稿では生死判定法としての培養法と非培養法のそれぞれの限界と問題点,これまでに損傷菌の検出と計数に使用された手法について概説する。既存の方法は参考にはなるが正解である保証はどこにもない。真の解決への道はそれぞれの現場での対象微生物,殺菌手法に応じた最適化のための個別に特化した条件検討を通して自ら模索するしか方法はない。