金管楽器では,PurpureocilliumやFusariumが多く見られるが,室内環境でよく見られるPenicilliumなどは少ない。金管楽器中のカビ相を制御する環境要因について研究した。楽器を長期間使用すると,Purpureocilliumなどが顕著に増加することが分かった。緑青が古い金管楽器に見られることから,金属イオンがカビの成長に影響する可能性が示唆されたので,金管楽器で多い6株のカビと,住環境から分離された5株のカビについて,金属耐性を比較した。その結果,P. lilacinus,F. oxysporumが,室内環境の普通種より銅や亜鉛のイオンに対して耐性があった。また,金管楽器から分離したカビは,銀イオンに対しても耐性があった。一方,一般環境に多い第二鉄とアルミニウムのイオンは,金管楽器から分離したかどうかに関係なく,カビの成長を阻害した。金管楽器に多いカビは,銅,亜鉛,銀の各金属イオンの多い環境に適応していると考えられる。